野球と中小企業ドラマが融合する再生ストーリー/小説「ルーズヴェルト・ゲーム」
「下町ロケット」で直木賞獲得後の初作品・池井戸潤の小説「ルーズベルトゲーム」を読了。「下町〜」と全体に流れるテイストは同じで、最後には爽快感をもたらす良作である。
今回、野球と池井戸潤とは程遠い内容かとおもいきや、業績悪化の中小企業の野球部という設定が作者の引き出しとマッチしていた。
創業者のカリスマ会長を引き継いだ社長は難問に直面していた。取引企業からの8割減産、新製品の納期短縮、銀行の融資の難航、リストラ、さらには競合他社からの合併話。そしていまや数字で見ればお荷物でしかない野球部の廃続問題。まさに「下町〜」のような苦しい展開の連続。
そんな中、野球部は有名監督と、エースと4番打者が別のチームに引き抜かれる大ピンチに、映画「マネーボール」のGMのような、数字をベースとした新人監督が現れる。そこに、現在野球部所属でなく高校時代にある事件をきっかけに野球から離れていた派遣社員の天才投手も登場。すると彼を軸に過去の因縁の対決と広がり、どんどん盛り上がる。野球の表現よりも人間ドラマが巧みである。
銀行マンのいやらしさ、合併を目論む大手の社長など、得意の池井戸潤設定で追い込みながら、それに打ち勝つ技術力と社員力のパワー。
企業の再生ドラマと、野球部の再生ドラマが最後には一緒になるカタルシスに、熱くなること必死。クスリ笑える最後のオチも嬉しい。
ルーズヴェルト・ゲーム
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