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辞書作りへの情熱、真摯な生き方に涙する/小説「舟を編む」

 本屋大賞をゲットした三浦しをんの小説「舟を編む」を読了。辞書編集という馴染みのない職種をピックアップする筆者の企画力、それを元に面白いストーリに仕上げる構成力がすごい。
 出版社の金食い虫部門の辞書編集部で、近々定年退職する辞書一筋のベテラン編集者が、思いを託す新人を発掘するところから物語はスタート。その新人編集者を中心に、チャランポランそうな先輩、ファッション誌部門から異動した女子の後輩など、それぞれ不器用ではあるが、辞書に向きあう様は、真摯であり美しい。右から左とすぐに消化する雑誌や本を作る出版社で、こんな構想から発売まで年月がかかるものがあるとは思わなかった。だから生まれるドラマもある。やっぱ三浦しをんの着眼点が素晴らしい。
 以前本屋大賞で賞をとった「天地明察」ばりのひたむきさ、「神様カルテ」のような優しい人々との触れ合いなど、辞書を通して、それぞれの人間ドラマがきっちり展開する。念願の発売に向けて、ストーリーに山もあり、ヌメリの紙の完成など、泣けるシーンもある。映画化など映像化も楽しみである。

 

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