【vol.22】救世主に現れるも、深夜の聖書勉強に苦戦

イズミール トルコ

アレックスと

 

なんとかトルコの中年のホモから逃げた私だが、トルコに上陸すると既に夜、銀行すでに閉まってトルコリラに両替もできない。
「マジでこまった」
先ほどの件もあり一刻もここを離れたいのが正直な気持ちだ。船で知り合ったシンガポール人のアレックスに事情を説明すると、「ならば一緒にイズミールに行こう」と、どうやらお金も貸してくれるようだ。「これは助かった」と感謝し、一緒にバスに乗った。イズミールはここから2時間程だ。すでにあたりは真っ暗なのだが、このバスはトルコの高速道路を走っている。非常にしっかりした道路で意外だったが、聞くとトルコは電車以上にバス路線が発達しているそうだ。なるほど。そしてイズミールに着いた。
アレックスと共にイズミールのバス停で降りた私は、ホテルでも探そうとしたが、結構都会でビルもたくさん建っている。「はたしてここはどこ?」と不安だった。それを見かねてかアレックスより「じゃ、僕の家で泊まれば」と提案。再び路頭に迷った私に救いの手を差し伸べてくれた。「ホント、ありがとう」と再び感謝。友人のベンビャミンと共に彼らが共同ですんでいると言うアパートに市バスで向かった。日本で言うと公共団地みたいなアパートだった。
しかし、いきなりの停電。どうやら電気がいかれたみたいだ、でもアレックスたちはなれたもの、ローソクを出して部屋を灯すと、結構楽しそう。それから、先生をしているトルコ人の友達も参加し、4人で即席のパーティーとなった。自己紹介に始まりたわいのない会話、そしてそこにあったギターを先生が伴奏し「レット一イッツビー」、ビートルズ合唱。音楽は世界共通だ。 さらにトルコピザをみんなで平らげた。非常においしかった。楽しい時間はあっという間が過ぎ、先生も帰って3人でテーブルを囲んだ。そしてアレックスが語り始めた。「私はキリスト教を布教するために、トルコに来ている」と、衝撃的な展開に目を丸くした。つまり、このイスラム教95%ぐらいの国で、タブーに挑戦している。それもシンガポール人が! そういえば彼の部屋を見せてもらったとき、謎の本が山のようにあったが、理解した。聖書だ。
「トシ(私の名称)、君は何か信じている宗教はあるか?」(アレックス)
「 特にないけど ・・」(私)
「なぜ? 」(アレックス)
「そういわれても」(私)
と、無宗教が大半の日本の説明もするも、理解されず。ついには、僕聖書を読むことを強要した。ここから長いレクチャーがスタート。「キリストの愛」、その「特別な関係」についてなどに及んだ。わからない単語があると、ジェスチャーまじりに熱弁は続いた。ちなみにこんな感じだ。
「神は完全だ、罪をおかさない存在」とうことに対して、「完全な人間は何%いると思うだ?(つまり罪をおかしていない人間)」 とアレックスの問いかけに、「30%ぐらい」ととりあえず返答。「NO トシ」と全否定され、「罪を犯さない人間はいない」と言い放った。これに呼応し「みんな罪人なら、みんな地獄へ行くってこと?」と熱く返した。
アレックスは首を横に振りながら「神を信じることで、同化し、君も完全になり、罪が消える」。うーん深いぜと一応うなずく。
とまあこれが2時間。0時を軽く回り深夜2時になった。私も明らかに疲れてきた、緊張の連続の日々、それもよくトルコに着いたぐらいの状況だったからだ。そんな私を見てアレックスが「トシ、疲れたかい?」と聞いてきた、私もさすがに「リトル、疲れた」と言うと、話はついに終わった。
そして、自分のベットを貸してあげるとアレックスに言われ、感謝しながら床に着いた。トルコ初日は、キリシタン2人に救われ無事幕を閉じた。

<旅行記:1996年3月6日>◇13日目-3◇トルコ