【vol.31】タクシー失踪?運ちゃんとバトルで警察へ

カッパドキア トルコ

カッパドキア

 約束の場所になぜいない?

散策も終わって、出口に来ると、問題が発生した。
約束したはずのドルムシュの運転手がいないのだ。その場所は駐車場のようになっており、他のツアー連中は、そこの休憩するお店で昼食を楽しくとっている。四方を見渡せども、車はない。不安がつのるなか、太ったガイドがにやにやしながら話しかけてきた。どこかで見覚えあるなと思ったら、初めに下見にいったツアーのしつこいガイドだった。

 太ったガイドの囁きに

「君らの運転手はもう帰ったよ」と話してきた。一瞬何を言っているのか、分からなかったので、聞き直すと、我々の運転手が職場を放棄して帰ってしまった、と言っている。「本当?」と不安を浮かべている我々を見て、そのガイドは「良かった乗っけてやるよ」と薄ら笑いを浮かべて言ってきた。それもツアー代金よりも高くふっかけてきた。どうやら始めにツアーを蹴ったのが、よっぽど気に入らなかったらしい。とはいえ、あまりにもひどい。その足下を見た言い方にキレた私は「だったら歩いて帰ってやるよ」と、言い返した。

勢いでタンカを切ったものの・・・

そして立ちすくみ4人を率いて、その場を後にした。ふざけんなよー。
しかし、怒りに任せて完全に冷静さを失っていたのを気付かなかった。威勢良く飛び出たものの、ここは街からかなり遠い。なんとか、始めに来た一直線の道に来たものの。明らかに目の前の現実は厳しい。果てしなく長いこの道をいったい歩いて帰れるのか?不安だけがよぎった。3キロ、4キロぐらい歩いただろうか、次第に後ろから着いてくる4人の声も聞こえなくなった。先頭を歩くも、背中から冷ややかな視線がいたく突き刺さる。目の前の果てしない長ーい道がゆらゆらと蜃気楼のように揺れている。

 背後から突然車が走ってくる音が聞こえた。振り返ると、あの嫌みを言い放った太ったガイドが乗ってるバスだ。こちらをちらりと横目で見ながら、うすら笑いを浮かべて過ぎ去った。くー、腹立つ。すると、再び背後から車の音が聞こえ、なぜかストップした。振り返ると、我々がチャーターした車だ。

突如背後からタクシーが登場

「えっ」と、驚いたが、大声を叫びながら、ドアから出て来きた運転手を見て、怒りが込み上げて来た。「なんであそこにいなかったんだ」と私が言ったが、相手もこっちに向かって叫んでいる。とにかく怒りが収まらない。興奮状態のタクシーの運転手と怒った私では話し合いにならない。「別の場所にいた」という彼の声もまったく聞く耳を持たない。「とにかく乗れ、乗れ」という運転手に対しても、「絶対乗らない」と一歩も引かない。当然片道の金も払わない。しかしだ、後ろをちらり振り返ると、冷めた目でみる4人がいた。そう、現実は歩けるはずもなく、これに乗るしかないのだ。「まあまあ」と、なだめる声に促され、一時休戦をきめこんだ。
ここまで言い張った以上、気まずいので、後ろの座席で腕を組みながら沈黙。行きとは違って、帰りはどんよりとした空気がただよう。そして、街が見えて来た。どこかで見た風景だ。心の中では良かったと思いながらも、怒りは消えない。

街到着もバトル再会

車が止まった。ドアを出ると、お金を請求してきた運転手に4人が順番に払った。そして私は当然拒否。再びゴングだ。「どうしてあの場所にいなかったのか?」。再び口論が繰り返された。ついに、「警察へ行こう」と叫んだ運転手に対して、私も「じゃあ、行こう」と呼応。心配する4人を残して、2人で車に乗って警察に向かった。
日本で言う派出所のような場所に、警官が1人いた。間に入って2人の話を聞いていた。まず運転手の言い分タイム。トルコ語で、興奮気味に身振り手振りを交えて熱弁。ふと冷静になると明らかに不利だ。ネイティブに勝てるのか? しかし、私は、一つ一つゆっくりと、英語でかたり初めた。「始めに私は彼と約束をした。そこの場所にいることを。しかし、彼はいなかった。だから彼は約束を破った」と、などなど一つ一つ話した。その警官は、しっかりと聞き入っていた。
次第に興奮していた運転手も、次第にトーンが落ちて来た。間に入ってくれたおかげで、私も彼の話が見えてきた。どうやら別の場所にいたというのは本当のようだ。それも何故そこにいたのかが分かった。原因はあの我々に嫌みを言ってきた太ったツアーガイドだ。彼が運転手に我々は別の場所に待ってるよと、言ったらしい。
何ー!?

和解の握手とチャイタイム

警官も「嘘つきは、そのガイドだ」と裁定した。ようやく理解した私は、「お互い誤解だった」とその運転手とがっちり握手した。お金も払って即座に和解した。「チャイ(お茶)でもごちそうするよ」と笑顔でいうので、「そう?いっちゃう」ばかりにお店に行き、オープンカフェで仲良くチャイタイム。すると、背後から人の気配が。心配で見に来た4人が、何事かと不思議そうな顔でこっちを見てるのだ。そりゃそう。さっきまで喧嘩して警察まで行った2人が楽しく談笑してりゃそう思うよな。
「ごめーん、忘れてたー。」

<旅行記:1996年3月13日>◇20日目-2◇トルコ・カッパドキヤ