【vol.16】苦難のピラミッド登頂もポリスにカツアゲ

エジプト カイロ ピラミッド

ピラミッド

ピラミッド間違えた?

 ピラミッドの岸壁にへばりつき登り始めた。9人の全員を確認し、それぞれが上に目指した。しかし、登るうちに、誰かが「これは危険だ」と言い出した。たしかに裏マニュアルによると、女の子でも登れるほど楽というものなのに、目の前の山は明らかに砂のがれきである。石の階段を上るというより、ロッククライミングに近い、しかも、足場が弱いため、すぐに崩れ落ちる。足下を見ると、落ちれば死ぬ高さまで来てしまった。「まさか?これはクフ王ではないのか?」と頭によぎった。エジプトにはピラミッドが3つある。有名なものクフ王であり、裏ツアーはこれを登ることである。しかし、我々はあまりに深い霧のため方向感覚を失い別のピラミッドに登ったと考えても不思議ではない。

ピラミッドで多数決!?

 悩んだ我々は、ピラミッドの中腹で多数決をとった。「まずおりたい人」とかけ声を出すも、皆手をあげない。このまま一人で手を挙げおりるもの怖いのだ。結局数名が俺は登ると言い出し登り始めた。半数以上はその場にたたずんで動くこともしない。事態は最悪だった。
 しかし、変わった。私も登り始めると、上の方から声がした。「こっちは楽だぞ!」という叫びだ。「なに!ホントか」と左の方に平行移動した。おそらくピラミッドの4つの角の一つとおもわれる場所に到着すると、まともなしっかりした石を発見した。希望の光が灯った。

やっぱり正解だった

 「こっちだ」と私はおもわず叫んだ。一人一人少しずつ合流した。皆安堵の表情を浮かべて登り始めた。私は最後尾で後に続いた。「みんないるか」と叫んだ。なにせすごい霧だ。3M先の人は見えない。しかし、応答はない。不信に思うも、ひらすら上に向かった。登り始めてから30分以上はたっただろうか、そろそろ頂点は近いと感じた。再び「おーい」と呼びかけるも、またも返事はない。「どうなってるんだ」と思うも、後少しだと思うと喜びいっぱいだ。5段、4段、3段、2段、そして最後の1段だ。ついにピラミッドの頂点だ。そして両手を支えて「えいや」で登った。しかしここで事件が起こった。

頂上到着もまさかの…

 「やった」と両手を上げて喜んだが、目の前に先に登った仲間が皆正座で座っている。直後1人の警官が私に近づいてきた。「え、なんでここにいるの?」とキンちゃんバリに驚き、ボディーチェック。ポケットにはいていたなけなしのお金をもぎ取られた。そして皆と同じに正座をさせられた。どうやら皆同じようにお金をとられたようだ。仲間の一人は靴の中に隠していた1万円を奪われた。「30分後にまたくるから座ってろ」と言い捨てると、一仕事終えたかのように帰っていった。嵐のようなことが起こり我々は、しばし呆然としていた。この裏ツアーは前提としてピラミッドに登り、下り終えたところで警官に捕まり、バクシージとよばれる賄賂のようなお金を渡し解放されるのが一般的な流れなのだが、頂上にいるとは予定以外もいいところだった。後から宿のベテランに聞くとこんな例は初めてだったようだ。
 ともかく、警官が帰って後、「みんな無事で元気に良く登った」と安堵し、ピラミッドの頂上で喜んだ。そして写真大会、みな笑顔だった。その後朝日は霧のためみることは出来なかったが、無事ピラミッドをおりることが出来、見つかることもなくタクシーではなくバスで宿に帰った。個性もバラバラの9人が、トラブルの連続、なんどとなく諦めかけたけど、ピラミッドを征服できた。この思い出は忘れない。忘れられない。

<旅行記:1996年3月2日>◇9日目-3◇エジプト(カイロ)