【vol.15】素人タクシーとバトルも執念でピラミッド到着

エジプト カイロ ピラミッド

ピラミッド

 悪い予感は当たった。お金をケチし素人タクシーの運転手を選んだばかりに、予定の場所ではなく、なんとスフィンクスの入り口に止められたしまった。24時間見張っている警官も4人いる。「やべえ、捕まる!」と言葉を発すると、「バックしろ」と運転手に絶叫した。しかし、理解を示さない運転手は「おりろ」と抵抗し、強制的に我々はおろされた。そしてお金を払えと要求、しかもはじめの金額より高い。納得行かない我々が支払わないと反論し、口論が始まった。それがきっかけだった。30分以上の騒動に発展、運転手、そして「何事か」と警備をしていた警官、エジプト人数人に囲まれた。その騒動の中、私は強制的にタクシーの中に監禁された。結局彼の言い値で支払うこととなった。

 タクシーの運転手はこれで納得したのか、すぐに帰ったが、騒動に入ってきた警官が噛み付いてきた。

 「なにしにきたのか」など質問攻めにあった。「ジャスト ウーオーキング、テイク ア ピクチャー」としらを切ると、「ウソつけ、ピラミッド登りにきたんだろう?」と確信に迫ってきた。再びしらをきり通すと、「お前らもし登ったら俺が捕まえてやる。Get to you!」と吐き捨てられた。そのため我々はいったんピラミッドと反対の方向へ歩き退散した。
 
 完全にぶち切れた。もう逆切れ状態の我々は、ピラミッドと離れながらも、登ることを決意した。ピラミッドの横に位置するスラム街に潜入しそれを抜けて近づく魂胆だ。しかし、裏マニュアルにあった入り口を見つけることができない、今日は霧も深いため5M先も見えない条件もあり、当然土地勘もなく時間だけが過ぎていく。ついてくるだけの8人の冷たい視線が突き刺さる。焦ったがついに入り口らしき壁を発見した。一安心するもここがそうと決まった訳ではない。お互い顔を見合うも、そう後には引けない。壁を登り目の前にそびえる急な砂の坂を登った。「これはきつい」、足が砂にめりこみ、なかなか前に進まない、女の子もいるが、大丈夫?と心配しながら先をいそぐ。

 なんとか登った。しかし、肝心のピラミッドが霧のため見えない。目前には2階建ての建物があった。「なんだここは」と予定外の連続に混乱した。やっとの砂の坂を登り息を荒げている仲間をみると、いまさら違ったなんていえる状況ではない、焦る気持ちを隠し指示を出した。「2手に分かれて、ピラミッドを探す、警官には見つかるな」。私のチームは3人、忍び足で動く、建物の横を抜けると、ぼんやりと光が見え、そこに斜めの線が見えた。「ピラミッドじゃない!」とつぶやくようにいうと、仲間の一人を偵察に行かせた。すぐに間違いないと小野さんの返事があり、いそいで別のチームを呼び戻し合流した。
全員が集合した。登ろうと意思を確認するも、途中で警官に捕まってはもともこうもない、ピラミッドまでは100Mほど先だ。
 しずかに、しずかに、一人ずつすすんだ。100M、50Mと進む、ついに視界に黒い壁をとらえると、誰ともなく急に走り出した。何度もトラブルにあい、諦めかけたピラミッドが目前にあるとなればしかたがない、胸が躍った。1人、2人、3人と、次々山のような壁に飛びついた。警官に見つからずピラミッドまでたどり着き歓喜するも、皆の表情が曇った。最後の試練は、絶壁の壁を登らなければならないのだ。
<旅行記:1996年3月2日>◇9日目-2◇エジプト(カイロ)