【vol.3】ヴェニスはラビリンス!水の街で迷子になる

イタリア サンマルコ寺院 ヴェニス

ベニスの風景

裏路地は迷路

 霧の深い朝、歩けど歩けどもサンマルコ寺院に行けず、こここがどこだかがすでに分からなくなってしまった、路地裏に食い込みすぎて完全に迷ってしまった。普通の人が暮らす住宅地なのだろうか、どこもかしこも同じ建物に見える。時折道案内の矢印があったがまったく私には意味をなさない。
ともかくお腹が減った。そいやまだ何も今日は食べてない。
 その時、ひっそりと朝早くから開いているコーヒー屋さんが目に入った。「ラッキー」とばかりに駆け込んだ、まずサンドイッチを注文し、次に隣の親父さんが飲んでいるコーヒーが目にとまり、「あれと、同じものをください」と頼んだ。 よく分からないときは、見たものを頼む、これが旅の上等手段である。というか他に分からない。だが、びっくりした。おままごとのようなちっちゃなコーヒーが出てきたからである。量も当然少ない。「えっ、これだけなの」と正直思った。その夜部屋でガイド本を読んで気づいたのだが、それが本場のエキスプレッソだったのである。日本でも飲んだことはなく初体験だった。しかもなぜかアルコールが入り。これは隣のおじさんの好みなのだろうけども、「とにかくおいしくない、苦いし、アルコールもきつい」。頼んだのは私は「朝っぱらからアルコールを入れて飲むな」と横目でにらんだ。これがイタリアの礼儀なのかは分からないが、まだ食文化は調べる必要がありそうだ。 
 しばらくして、まだ開いてない市場、珍しいアーチ柄の石橋を通り過ぎた。結局、サンマルコ寺院も発見できなかった。そこでいったん宿を決めてから探そうと、来た道を戻った。宿は駅近くを狙うことに決め、5000リラの部屋を見つけた。この旅の一発目の宿は、あまり真剣に考えないで直感で決めた。

正規ルートは簡単

サンマルコ広場 さて、荷物を置いて落ち着いたところで、サンマルコに出発した。10時頃ようやく霧も晴れて、街がにぎやかになってきた。そこでルートを先ほどと変え、地図にもはっきりと分かる大通りをベースに、いろいろな店が建ち並ぶ道を行くことにした。すると今度はいとも簡単に当初目指していたサンマルコ寺院を見つけた。
 「いや大きい、なんだここは」。私はキリスト教徒ではないので、宗教上のうれしさはないのだがただ驚いた。この寺院は上にもあがることが可能であるので、当然高いところ上ることが大好きな性分から、すぐに上ってヴェニスの町を上から見下ろした。「気分は上々」。
 その後美術館を2つはしごし、夕方になった。ここは渋く決めようと誰も行かないような岬に行き、夕日を見に行った。ヴェニスの夕日は薄い赤だった。かなり自分に酔っているようだ。

  夜になり、ここはリッチに食べようと決めた。思い切って一人でしゃれたレストランに入った。しかしあきらかに場違いな格好でウエイターからもジロリと一瞥されて、トイレの近くのような微妙な場所に案内される。「ひとグループだけで他に誰もいないのに・・・なぜ。これが人種差別ってやつ?」
 まあ気を取り直し、メニューを見た。英語版もあったので、なんとかサラダ、ビール、そしてスパゲティを注文。約2800リラほどである。しかし、ウエイターは目を丸くした。「それだけ?」みたいなリアクションを見て不思議に思ったが、メニューが出てくると納得。スパゲティの量が少ないのだ。3口サイズといったところか。つまりこっちのスパゲティは前菜で、メインは肉や魚がレストランの流儀なのだ。店員からすると「コースの頼み方も知らないのかジャップ!」のような感じだろう。「しまった」と思ったが、もう時間は戻らない。ガイドを見ながら時間をかけて皿を平らげこれがあたりまえの食事スタイルと余裕のポーズでコーヒータイムに突入。しかし高い割には、あまりおいしいとは感じなかった。そもそもお腹いっぱいにならん。
 朝から晩まで今日一日、ヴェニスの食とはとことん縁がない。

1996年2月22日◇2日目-2◇イタリア(ヴェニス)